2011年01月31日

失われた日々(長文)。







注)今回の記事は永野護著『ファイブスター物語』を知っていると、より一層楽しめる作りになっております。
というか、FSSを知らないと楽しめません。あしからず。


ファティマ(PC)が壊れた。
いきなり、だ。
星団の誰もが知っている通り、騎士(ボカロP)であることとは、すなわちモーターヘッド(DAW)を駆り、民衆の代理として戦うことである。
それ無くして、何のための騎士(ボカロP)か?
そしてモーターヘッド(DAW)を操るために、ファティマ(PC)が不可欠なことは子供でも知っている。
つまり私は騎士(ボカロP)としての命脈を絶たれる事態に追い込まれたのである。

予兆は無かった。
ファティマ(PC)は、日常生活を送る上では何の異常も見せてはいなかった。
iTunesもjaneも、Fire Foxも全く以て完璧に動作していたのだ。

だが私のファティマ(PC)は…モーターヘッド(DAW)を操ること一点に於いてのみ、拒否反応を示した。
これまでに何百回と繰り返しただろう動作…我が愛機Pro Tools LE 8のファティマルームに乗り込み、ヘッドコンデンサを着用する。
コンタクトの色が深く沈み、表情が瞬間的に失われ…彼女(PC)はファティマの顔になる。

が、しかし。
私が始動キーをセットするやいなや、彼女の目は在らぬ方向を向き、その小さな口からは耳を覆いたくなるような悲鳴と吐瀉物が漏れ出すのだ。

私とて騎士(ボカロP)として、少なくはない数の戦場を渡り歩いて来た者だ。
多少のトラブルならば自分で解決する自信はある。
だがしかし…今回ばかりは勝手が違った。

私のコネが効く限りで、腕利きのマイスターの診療も受けた。
だが、彼らは一様に首を横に振る。
まるで示し合わせているのではないかという程に、同様のことをマイスター達は言うのだ。

「ハード的には問題は無い。
だからファティマ(PC)の記憶野を一度白紙に戻し(フォーマット)、モーターヘッド(DAW)をコントロールするために本来のプログラムを上書きすべきだ」と。

最初にそれを聞いた時、恥ずべきことだが私は激昂した。
気付いた時にはマイスターの襟首を掴み上げており、必死に止めるファティマ(PC)の声が私に正気を取り戻させた。
怒りで我を忘れるなど、騎士(ボカロP)にあるまじき行為である。
私は何度も非礼を詫び、ファティマ(PC)を連れてマイスターの下を辞した。

私のファティマ(PC)に対する態度は、世間一般の騎士と比べて冷淡な方であると思う。
パートナーではなく、あくまで『道具』としてファティマ(PC)を見ている。
どれだけ可憐(コア数が多いほど可憐)であっても、所詮は演算機械に過ぎない。

だが…だがしかし、共に過ごした年月を忘れることがどうして出来ようか?
故郷を離れ早幾年。
決して騎士(ボカロP)としての才に優れていたわけではない私が、文字通り血の汗を流し、辛酸を嘗め、泥水をも啜る思いでようやく手に入れたファティマ(PC)。
名工ヒューレット・パッカードの監督下の一工場で作られたとは言え、あくまでそれは量産品。
その事実を飲み込んだ上で、彼女は私にとってただ一人のファティマ(PC)でもあった。
彼女(PC)と共に幾多の戦場(ニコニコ動画)を巡った。
自分より優れた名のある騎士(ボカロP)が星の数ほどいることは百も承知。
だが、それでも彼女(PC)のサポートで愛機Pro Tools LE 8を駆ることで、私は遅咲きながらも騎士(ボカロP)としての人生を歩むことが出来た。
真剣に私は、このまま何処までも行けると思っていた。
何処まででも。
このファティマ(PC)とモーターヘッド(DAW)さえいてくれるなら、何処まででも。


マイスターの言うように、ファティマ(PC)のプログラムをすべて上書きすれば、彼女(PC)は機能を取り戻すだろう。
再び私は騎士(ボカロP)として歩き出せる。
その代わり、彼女(PC)の中の思い出(ボツにした恥ずかしい歌詞)はすべて失われる。
私の騎士(ボカロP)としての人生のすべてを見てきた彼女(PC)、その小さな頭の中(HDD)を綺麗さっぱりと消し去ってしまえば!!







結論から言おう。
畢竟、私は…私は…騎士(ボカロP)である自分を捨てられなかった。
ファティマ(PC)から、その思い出のすべてを奪ってでも、騎士(ボカロP)である自分にしがみつきたかったのだ!!
ファティマ(PC)は何も言わなかった。
ただ黙って、私の目を見つめ…そして彼女(PC)は目を閉じた。
そして…私はマイスターに言われた通りの処置(OS再インストール)を施したのだ。

かつて…かの剣聖カイエンのファティマが一度記憶を失うほどの重症から回復したという話を、以前耳にしたことがあった。
眉唾ものの噂ではあったが、剣聖のファティマはバランシェ・ファティマだという話だ。
ならば、どんなオーバーテクノロジーが、そこに秘められていたとしても不思議はない。
無論、私のファティマ(PC)の性能は、そのような一点物のファティマとは比べるべくもない。
比べるべくもないが、私の脳裏に甘い期待が全く無かったとは言えないだろう。

もしかしたら…プログラムを上書きしても、その記憶(ハシビロコウ写真やぬこ写真)は生き残っているのでは?
もしかしたら…私と過ごした日々を、覚えてくれているのでは?


無論、夢は…夢に過ぎなかった。


処置を終え、記憶野(HDD)をフォーマットしたファティマ(PC)は、そのつぶらな瞳を開いて私にこう告げた。

あなたの名前を入力してください

…。
……。
流れよ、我が涙、と私は言った(セルフエコノミー)。




【要約】
音楽作るためのDAWソフトが開けなくなったよ\(^o^)/オワタ
だから、HDDフォーマットしてOS再インストールしたとさ。

たった2行が、こんなに長い文章になるなんてふしぎ!

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